ガット研究の動向と問題点 7
それらは一部はガット枠内の明示的な例外措置として、他の一部はガット枠外のいわゆる灰色措置として数多く存在しています。
ガットの外見的な理念主義は、実はこうした内部的な現実主義によって支えられてきたのです。
第三に、ガットにおける農業の特殊な位置づけについてです。
ガットの現実主義がもっとも鮮明に示されているのが農産物の取扱いにおいてでした。
ガット発足当初より農産物については輸出奨励金、余剰農産物の処理、輸入数量の制限などの原則に背馳する措置が一定条件の下で認められており、その点では一般工業製品とは別扱いとなっていました。
農産物は自由貿易原則にはなじまないというのが、ガットの当初からの基本認識だったのです。
その背後には、当時アメリカが大々的に余剰農産物の輸出を行なっていたという事情もさることながら、各国とも国内に複雑な農業問題をかかえ、多様な農業保護政策を展開していたという事実がありました。
それを無視して形式的に自由貿易原理で押しつけてみても実効があがらないばかりか、ガットからの離反を招くばかりであるというのがガットの判断であったのでしょう。
そうした事情は現在でも強められこそすれ、いっこうに弱まっていないといっていいです。
とするならば、現時点において農業保護の全廃、農産物の完全自由化といった19世紀の自由貿易論を彷彿させる議論が改めてガットの場で議論される理由は一体どこにあるのでしょうか。